(8) 鏡開きの真義
1.鏡開きとは
1月11日は、鏡開きの日。
鏡開きとは、正月に神棚や床の間に供えた鏡餅を下げて食する行事です。結婚式や落成祭などで、酒樽を鏡に見立てて、木槌でふたを割るという行事も鏡開きと言います。
撞(つ)ききたての餅も十日も経ちますと、かなり堅くなります。昔、武士の家では、堅くなった鏡餅を刃で切るのを忌(い)み、木槌で割ったとか。実際には「割る」のですが、この「割る」という言葉を忌(い)んで「開く」と言い換えると伝えられております。
「鏡開き」をヤフーで検索してみると、トップあたりに出てくるある酒造会社の説明に、
鏡」は円満を、「開く」は末広がりを意味します
とあります。
丸い鏡が円満を意味し、末広がりで開いていくことから、1月11日の鏡開きの日に限らず、結婚式や落成祭等の各種行事で鏡開きが行われています。
それはそれでよろしいのですが、鏡開きの「鏡」にはさらに奥深い意味があり、それを承知していただくの鏡開きの意義がいや増すことでしょう。
2.鏡とは、神霊のよりしろ
鏡は、ものを映します。正月の餅を鏡餅と称するのは、その餅に大年(おおとし)の神様を映すためです。
つまり、鏡餅を神の「依り代(よりしろ)」(受信装置)としてお供えして、新年を迎えるという祭りをするためです。結婚式や家屋落成の式などで、酒樽を鏡に見立てて鏡開きを行うのも、祭祀民族として神祀(まつ)る姿を現してのことでしょう。
神祀(まつ)りというと、神社の神主さんが行うものとは、お考えにはなりませんように。
日本人の生活と神祀りとは、切っても切り離せない関係になっています。
大和(やまと)民族とは、祭祀民族なのです。
日本人の年中行事はすべて神祀りと考えて戴いてよいでしょう。
日本人の生活、即、神祀りと考えて戴いてよろしいのです。
3.真空パックの鏡餅でよいのか
3-1. 真空パックの鏡餅
「鏡は円満を意味します」で済ませるのではなく、それが神霊の依り代であると知れば、日本人のまつり心が一層光を増すことでしょう。
最近は、面倒を避け便利を尊ぶという近代的風潮が輪をかけて、カビの生えない真空パックの鏡餅が登場し、2年3年と使い回している家もあるようです。
これでよろしいものでしょうか?
古びた鏡餅で新年清々の神気を迎えられますか。
平成16年になりますと、平成16年の大年の神様が一年の運命を携えてお生まれになります。(役目を終えた前年の大年の神様は、元の神座へお帰りになります。)
その大年の神様を各自の家へお迎えするために、玄関に注連(しめ)飾りを張って結界をつくり、鏡餅を供えて神のヨリシロとするわけです。
これは、家を祭場とするための道具立てです。
3-2. お年玉とは大年の魂(たま)
こうして自分の家へお呼びした様の魂を分けて戴くのが、大年の魂(たま)、すなわちお年玉ですね。
お年玉は本来、こどもの小遣いじゃあないのです。
大人も子どもも均しく、大年の魂(タマ)を戴いて、この一年を力強く生きていきましょうというのが、新年祭です。
大年の魂のヨリシロ(受信装置)となる鏡餅を、カビが生えて面倒だからということで、去年おととしの真空パックで済ませて良いものでしょうか。
やはり、毎年毎年、新しい米を撞(つ)いて作った餅を供えて祀りをしたいものですね。
4.鏡の真義
天皇の御位を象徴する三種の神器の一つに、「八咫(ヤタ)の鏡」があります。
天照大神が、「この鏡を見ること、我をみるごとくせよ」とおっしゃたと古典にあります。(古語拾遺)
八咫(ヤタ)の鏡をみることが、天照大神を見ることと同じである、とおっしゃったわけ。
つまり、八咫(ヤタ)の鏡から天照大神がお出ましになると言うことですね。
鏡は神を映すのでありますが、両面の合わせ鏡は、一方に神を映し、他方に人を映しますと、それによって神人交通がなされる神宝ともなります。
鏡を置いて神祀りをするという意味がおわかりいただけるでしょう。
また、例えば先祖のミタマを祀りをするという際に、鏡を一個用意します。
国懸(くにかかす)の神様にお願いして、神様の世界の国懸(くにかかす)の鏡をこの世の鏡に重ねて戴き、その鏡に、ミタマたちを映し取っていただく、つまり神様の御手に取って戴く。
そこから出雲神界や産土(うぶすな)神界の導きをお願いするという作法もあります。
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新年、大年の神様を迎えるというマツリの場に置かれるのが、鏡の餅であれば、カビが生えるから面倒だなどとは言ってられませんでしょう。
面倒くさいというのも人生の一部ではありませんか。
カビをこそぎ落とす作業もまた、セ・ラ・ヴィー(それが人生だ!)。
【参考】 初詣に産土神社をさておいて遠隔地の有名神社へ参るのは本末転倒
→ 初詣は先ず産土神社へ参拝を