産土百首リストと本田親徳

本田親徳翁について

 本田親徳(ちかあつ)は、幕末の文政5年(1822)1月に薩摩藩の武士・本田主蔵の長男として生まれ、長じて京都に遊び、その後江戸に出て会沢正志斎に入門して、和漢の学を学びました。平田篤胤とも親交があったといわれています。

 京都滞在中、21歳のとき、狐憑きの少女が憑霊状態で和歌を詠むのに出会い、霊学研究に入ったといわれています。
 彼が築きあげた霊学の体系は、以下の3つの柱分類されます。

 ・帰神法:神や霊を人に降ろす方法
 ・鎮魂法:精神統一の修行法
 ・禁厭(きんえん):まじない

本田霊学は、近代の古神道霊学の源流の一つとして位置づけられ、長沢雄楯や副島種臣、さらには大本教の出口王仁三郎や神道天行居の友清歓真等の神道家にも大きな影響を与えています。

「産土百首」に対する私の立場

 本田霊学でいうところの「鎮魂」といい「帰神」といい、日垣神道を学ぶ私の感覚とはかなりずれるものがあるのですが、産土百首については味読すべき点があると思います。

 つまり、このサイトの「産土百首を味わう」は、本田霊学の流れを受け継ぐというものではなく、あくまでも日垣神道を学ぶ私の神道感覚によって書きつづるものであります。

 本田翁に深甚の感謝を捧げつつ、新生神道の流れを書きつづろうと思います。

産土百首リスト

本田親徳(ちかあつ)翁の「産土百首を下に列記しておきます。
1 産土に 生れ出でつゝ 産土に 歸る此の身と 知らずやも人
2 往き還る 足踏むごとに 産土の 神の惠みを 思へ世の人
3 草も樹も 吾が産土の 御體の 御けつ物ぞと 人は知らずやも
4 産土の 靈(みたま)の懸かる 此の身をし 佛の子ぞと 言ふは誰が子ぞ
5 産土を 神とも知らず 祭らずて 棄て置く村は 獸なるかも
6 産土の 神の靈の 無かりせば 人の産業(なりはひ) 如何にかもせむ
7 産土の 神の形を 人皆の 同じ形と 人な思ひそ
8 産土の 御體踏みて 世を渡る 人をし見れば 貴きろかも
9 産土の 道行く人を 見ても知れ 神の惠みの 限りなき世を
10 産土の 數限りなき 御惠みを 一二三四も 知らぬ哀れさ
11 産土は 尊きものか 飽きなくに 物知らむ我し 惠むを見れば
12 産土の 産土たるを 知る時は 人の人たる 道に違はじ
13 産土の 富士より高き 御惠みを 少(いさゝ)か知らぬ 民の悲しさ
14 産土の 神の惠みを 知る人は 人の神なる 人と知るべし
15 産土の 海より深き 朝夕の 惠みを露も 知らざるは憂し
16 産土の 惠みの露の 懸からずば 四方の草木の 何に育たむ
17 地を走る 獸や空を 飛ぶ鳥も 御靈賜へる 産土の神
18 這ふ蟲も 水行く魚(いを)も 産土の 神の賜物 慈愛(いつくしみ)せよ
19 寺々に 住む僧等(ほふしら)も 産土の 神の御子ぞも 惡しくすな人
20 魚を食ひ 美酒飲むも 産土の 惠みなるぞと 思へ僧等
21 錦着て 妻子と寢るも 産土の 神恩(めぐみ)重ねし 僧(ほふし)ばらかも
22 産土の 道知らねこそ 僧等が 道の巷に 立ち食ひすなれ
23 産土に 見放たれたる 僧等が 石根木の根に 人の夢みる
24 物食へば 父をし思ひ 衣(きぬ)着れば 母思ふべし 僧ながらも
25 僧等が 經誦む聲も 産土の 人に授けし 人の聲ぞも
26 八十神の 遺せし道かも 西戎(から)國の 耶蘇が教への 曲がれる見れば
27 産土の 神と神との 神議(みはかり)に 結び給ひし 夫婦(めを)の縁しぞ
28 雨霰 雪や氷も 産土の 人を憐れむ 涙なるらめ
29 産土の 惠みの露に 染められて 花も紅葉も 色に出づらし
30 飛ぶ雲も 鳴る雷も 産土の 神の聲ぞも 神の像(かた)ぞも
31 産土の 神心善し 産子等が 背(そびら)向けても 惠ます見れば
32 産土の 罰中れりと 人皆に 指なさゝれそ 吾が黨(とも)の子等
33 産土の 神像(みかた)よく見よ 金も木も 土も水火も 其の中に有り
34 音に聞き 眼に見る物等 悉に 産土神の 神身(みゝ)にこそあれ
35 産土の 神在(ゐ)まさゞる 地(ところ)なし 烏鳴かざる 里は有りとも
36 産土の 神隨らなる 國土に 出づる寶の 限りあらめや
37 敷島の 大倭には有らぬ 西戎國も 産土神の 在まさゞるなし
38 年に日に 積るたからも 産土の 御骨血鹽に 有らざるはなし
39 雨降らぬ 國は有れども 産土の 御魂の露の かゝらぬはなし
40 時々の 暑さ寒さも 産土の 恩頼ぞ 齋け世の人
41 産土の 神の神山に 啼く鳥は 啼かざる人に まさりたるらし
42 産土の 神の御名をし 人問はゞ 國津御魂の 御子と答へむ
43 惜しむ可し 産土神は 在ませれど 神名(みな)傳へ無き 百の西戎國
44 産土の 神名傳はらず 定まれる 君無き國ぞ 殊に悲しき
45 悲しきは 彼の西戎國 産土の 神名傳はらず 道も知らなく
46 人今に 産土神の 神徳(みめぐみ)を 知り盡すべき 時至るべし
47 産土の 神に習ひて 顯人(あらひと)の 道の柱に 立つべき吾ぞ
48 産土の 神は我が神 今の世と 後の世までと 我は頼まむ
49 敷島の 日本の國を 産土の 道の御供と 出で立つ我は
50 産土の 神の御典を 文机の 上に演べつゝ 斃れむ我は
51 産土に 神在まさずば 吾が靈(たま)を 神府(かみのみかど)に 誰か送らむ
52 人靈の 樂し悲しと 活(はたら)くは 其の産土の 在るにこそよれ
53 産土の 吾が皇神は 萬世に 靈體(みたま)守らす 神にこそ有れ
54 親の親 子の子の末も 産土の 神の恩は 盡くる時なし
55 産土の 神の稜威を 知らずして 異(け)しき蕃神(からかみ) 仰ぐ世の人
56 安らけく 爭(いか)で渡らむ 産土の 神の幸(みさち)の 世になかりせば
57 産土の 神の心に 符ひなば 家に寶に 富榮えなむ
58 産土の 神祈りして 其の後に 天地の神は 祈るべきなり
59 産土の 嚴の華表(とりゐ)は 靈と體(み)の 不淨(けがれ)を祓ふ 門にこそあれ
60 祈るべき 吾が神置きて 他(こと)村の 産土拜む 人は惑へり
61 穀物(たなつもの) 秋の初穗は 産土の 神の御前に 捧ぐる物ぞ
62 衆(もろ)神は 吾が産土の 神祭り 祭りて後に 相祭るべし
63 産土の 靈招ぎますか 旅人が 己が國村 慕ふを見れば
64 旅衣 重ねし我も 産土の 靈思へば 涙ぐましも
65 産土は 貴とき物か 山人が 京見捨てゝ 歸るを見れば
66 産土の 靈の露の 如此(かく)しこそ 綾に染めけめ 百の樹の花
67 安らかに 高枕して 居る事も 其の産土の 幸にこそあれ
68 物皆は 其の産土の 賚(たまもの)ぞ 人の手力 何をなし得む
69 眼に見る物 耳に聞く聲 悉く 吾が産土の 神の御幸ぞ
70 吹く風も 雨降る音も 産土の 神の御聲と 聞けよ産子ら
71 遠郷に 身はし在れども 産土の 神の恩は 忘れ兼ねつも
72 皇軍の 中に在りても 産土の 夢見る宵ぞ 我は樂しき
73 敵人の 矢串に向ふ 武夫も 其の産土は 思ひ出づらむ
74 人はよし 如何に言ふとも 産土の 神殿(みとの)守りと 成るべし我れは
75 靈魂(たましひ)に □[王+占。きづ]つけずして 産土の 神に歸すぞ 人の道ぞも
76 靈魂の 道の行末は 産土の 神の宮邊ぞ 初めなりける
77 眼の前に 産土の神 立ち坐して 魂の善し惡し 見給ふものぞ
78 産土の 神の耳眼は 大山を 隔てたりとも 見透しにます
79 祕(かく)し事 人は知らずも 産土の 神は熟く知る 愼めよ人
80 各々の 胸腹内に 産土の 神隠れ坐す 恐れてよ人
81 靈魂の 歸り着くべき 産土の 神を神とも 知る人のなき
82 狭意(さかしら)に 言擧げなせそ 産土の 神の正道 聞き知らずして
83 彼もまた 神の産子ぞ 我もまた 神の産子ぞ 美はしみせよ
84 瓢形の 雲の上人も 草野なる 蒼生(あをひとぐさ)も 産土の子ぞ
85 家居なき 野の末山の 奧山も 産土の神 在まさぬはなし
86 青雲の 向伏す限り 産土の 神の靈の 到らぬは有らじ
87 産土の 皇神置きて 吾が靈の 歸り着くべき 八十隈はなし
88 獨り行く 歸らぬ旅を 産土の 神の命ぞ 誘ひ給へる
89 唯だ頼め 産土神を 唯だ頼め 唯今の世も 唯だ未來(さき)の世も
90 善し惡しき 靈の審判(しらべ)を 産土の 神府は 定め給へる
91 産土の 神在まさずば 愚かなる 此の吾が魂を 誰か救はむ
92 千萬に 神は坐(ゐ)ませど 産神の 吾が皇神は 身守りの神
93 阿彌陀等が 言喧ぐとも 産土の 吾が神達は 微笑み坐すべし
94 産土の 神達祈り 子孫(うみのこ)の 八十次々に 榮え行け人
95 身を修め 家を齊ふ 道こそは 産土神の 道の本なれ
96 前の世も 現(こ)の世も後の 世の事も 産土神ぞ 主宰(つかさど)ります
97 産土の 神な忘れそ 産土の 恩は後の 萬世までに
98 産土は 眼に見ゆる神 産土は 耳に聞く神 信(たの)め世の人
99 靈魂の 汚れを祓ひ 産土の 神の愛子と 在ませ世の人
100 産土の 神許(みゆるし)有りて 天地の 神は諾ひ 給ふべきなり