日本酒「京はな吹毛剣(すいもうけん)」酒の切れ味を追求する蔵人たち
日本酒は日本文化の華である:「京はな吹毛剣」(すいもうけん)の蔵元・産地
日本酒「吹毛剣」(すいもうけん)の酒銘を楽しむ
吹毛剣とは、剣気に誘われた毛が吸い込まれるように刃に触れて真っ二つに切れていく、それほど切れ味の鋭い剣のことである。
吹毛剣の名に値する剣を持つならば、その剣気によって敵を屈服させることも可能であろう。
その吹毛剣の切れ味とは、いかほどのものであろうか。
吹毛剣の切れ味に想いを致していると、家内が五枚刃のひげそりを買ってきた。シックのハイドロの五枚刃である。このサイト「日本酒は日本文化の華」は、もっぱら日本酒について書くのが本務であるのに、シックの髭剃りの話とは、怪訝に思われるかも知れないが、ご容赦あれ。何しろ、この五枚刃の切れ味には驚いたのだ。
私は長く、シックの二枚刃の髭剃りを使ってきた。二枚刃が三枚刃、四枚刃になり、遂には五枚刃まで現れた。オイオイ,一体どこまで刃の数を増やすつもりだい、最後には十枚刃まで造るつもりかい、とそれを冷ややかに見つめていた。
ところが、この五枚刃、実際に使って見て驚いた。二枚刃とは切れ味が全く違う。髭があたかも五枚刃に吸い込まれるように切れて行くではないか。
これは、吹毛剣ではないか!
これこそが、吹毛剣の切れ味ではないか!
驚いてサイトで調べて見た。シック(Shick)という社名から察せられる通り、五枚刃の製造国はアメリカであった。国産品を愛好する私ではあるが、米国産であっても良い物は良いと素直に認めたい。髭剃りも、ここまで来たか。
吹毛剣の切れ味を実際に試してみる機会は、得られるものではない。ならば、このシックの五枚刃で、その雰囲気を味わって見てはいかがであろうか。この五枚刃は、とても肌にやさしいので、ひょっとすると女性の無駄毛の処理にも使えるかも知れない。
吹毛剣の蔵元「酒六酒造」と「京ひな」の商標
さて、吹毛剣からシック五枚刃の宣伝のようになってしまったが、話を吹毛剣の蔵元に戻す。
吹毛剣の蔵元「酒六酒造」は、「京ひな」の商標で知られている。その子細は次の通りである。
江戸時代より木蝋で栄えた歴史ある内子町。そこに蔵を構える酒六酒造のはじまりは、大正9年、五つの蔵元が合併し前身となる蔵が誕生しました。
昭和16年に初代、酒井繁一郎が「酒六酒造」を創立し、商標を”京ひな”と命名。初代と縁の深かったある京都の名僧がこの酒を飲み、賞賛したその日がひな祭りだったことにちなんでいます。
(酒六酒造のサイトより)
五つの蔵が合併して、第六の蔵として出発ということで、酒六(さかろく)と名付けたのであろう。
蔵人たちの心が他の酒銘にも観て取れる
「京ひな酒六酒造」の旗を立てて、蔵人たちが目指したのは、切れ味のよい酒をつくることであった。酒の切れ味を追求するという姿勢は、「京ひな酒六酒造」の他の酒銘にも観て取れる。
▼大吟醸「吹毛剣」(自然しぼり)
酒袋からしたたる「しずく」を詰めた貴重なひと品。
▼純米大吟醸「一刀両断」
一太刀ですぱっと切れるようなさえを魅せる超辛口。
▼純米大吟醸「隠し剣」
最高峰の酒米を特別長期醗酵。澄んだ飲み口。
▼純米大吟醸「七星剣」
絹のように滑らかな喉ごしと余韻を残す、京ひなの最高峰。
この酒銘の一つひとつに、蔵人たちの酒造りの目標が籠められているではないか。
しかも「京ひな酒六酒造」は、自分たちが造った酒を最高の状態で酒飲みたちに飲んで貰いたいとの心から、酒の保存がきちんとできない小売店に卸すことをこばんでいる。
酒は生き物である。生き物である限り、その保存に細心の心配りが必要となる。
したがって、「酒六酒造」の酒は、吹毛剣を初め他の酒も、通信販売で購入する際にはクール便を用いることを絶対の条件としている。
そりゃあそうだ、折角の吹毛剣が、運送途中で鈍い駄剣にかわってしまっては、蔵人たちの立つ瀬がない。
こういう酒造り人たちの精進によって、日本酒が造られているのである。
吹毛剣(すいもうけん)というシャープな切れ味を、自分たちの作る酒にもたらそうとして精進する蔵人たちの心を想い、一杯の酒を大切に呑みたいものだ。
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