五才の紗良への手紙(自然と共に生きる日本人)

自然と共に生きる日本人


今年の目標の一つとして、「日本人の暮らし方」カテゴリーの記事を充実させるということがあります。

 「日本人の暮らし方」を考える際には、先ず季節の巡りと共に生きるという姿勢について述べなければなりません。日本は四季の変化が豊かで、その自然の移ろいと共に情感豊かに生きるのが日本人の生き方です。

 Japan has four seasons. (日本には四季がある)
 誰もが口にする言葉ですが。昔、これをアイルランドの女性に云ったところ、彼女に叱られました。

 「日本人の”Japan has four seasons.”にはもう聞き飽きました。どこにだって四季はあるわよ。アイルランドにだって”four seaqsons”はしっかりありますわよ。」

 そうです、その通りです。しかし、それでも「日本には四季がある」と云いたくなるのは、四季の移ろいの微妙なビミョウーな変化を鋭く感覚する日本人の感性を尊んでいるからです。

 日本列島大地の動きと連れ舞い起こして生きるのが日本人です。季節の移ろいを感覚するとは、日本列島大地の動きを感覚することにほかなりません。その感覚に基づいて、衣服を整え住居のたたずまいを調整し、食事のメニュにも彩りが加えられるのです。

 私には近々五才になる姪があり、その名を紗良(さら)と申します。
 間もなく誕生日を迎える紗良にあてた手紙を下に記しますので、お読み下さい。五才の幼児にむずかしい表現が多いなどとお考えにならないでくださいね。

現物にはしっかりとルビを振っていますので、紗良には充分読めます。幼児にとって、初めての表眼は、初めてであって「むずかしい」のではないのです。

 拙著『親子で学ぶ神道読本(一)父と母と産土の神』』にもわざと漢字の熟語をつかって「むずかしい」表現をとっているのですが、ルビさえ振っておけば子供にとって「むずかしい」事はないのです。子供は何でも貪欲にドンドン吸収していきます。

 日本人の感覚の微妙なところも、これぐらいの幼いころから目を向けさせると、情調豊かな子供に育っていくでしょう。

五才の紗良へ(二月は光の春)日本人の感性を磨こう


 拝啓 紗良ちゃん元気で幼稚園に通っていますか。今朝の大阪はめずらしく雪が降っています。山が近い紗良ちゃんのお家のあたりは、ひょっとすると雪が積もっているかも。
 二月は紗良の生まれた月、まもなく紗良五才の誕生パーティ、キリンのように首をながーくして待っています。

 雪の降る二月は一年で最も寒い月かも知れません。
 しかし、「二月は光の春」という言葉があり、風はとても冷たく気温も低いのですが、二月の太陽の光の中には幽かに春が感じられるという意味です。温度計を見ても、気温は高くはないのです。でも光の中に何となく春の訪れが近いと思わせる微妙なビミョウーな暖かさが感じられるのです。これを感覚して欲しい。コレを感覚できるのが日本人です。これが感覚できないと、バブバブしか言えない芙美乃一歳と変わる所はない。

 紗良はとっても賢い女の子です。
 物を考える力を知性(ちせい)と云いますが、紗良は知性の力(知力)を豊かに備えている。うんと運動して体力も付けましょう。知力・体力は、ほっておいてもついて行くのが紗良ちゃんですね。

 その紗良にとりわけ気をつけて欲しいのは、物を感覚する力、感性(かんせい)の力を養うということです。知力・体力に感性力が伴わないと、人間として日本人としての深みある人生が送れません。テストで良い点数を採るだけではだめです。情緒、詩心、歌心も大事にしなければなりません。

 まもなく五才になる紗良ちゃん、「二月は光の春」を感じとって下さい。
 冬から春に変わるということは、今日までが冬で、明日から突然ぶっきらぼうに春になるのではありません。冬の寒さの中に、既に春の兆しが芽生えているのです。物事の移り変わりというものは、そういうものです。
 「兆(きざ)し」も「芽生え」も良い言葉だ。まるで紗良みたい。
 感性力を培(つちかう)う方法としては、季節の巡りにうーんと注意して木々草花やお日様の光や風や雨に深く心を致すことです。さらにまた、必須の素養として、日本の詩歌にも親しむことですね。

 島崎藤村の「草枕(くさまくら)」という詩の一節を記しておきますので、誕生日パーティまでにしっかり覚えて暗唱してください。それが紗良の心の栄養になるのです。ごはんを食べて体の栄養を摂り、自然や詩歌に親しんで心の栄養を摂るのです。
 紗良ちゃん、がんばって大きくなりなさい。五才の値打ちを出して下さいね。
 春きにけらし春よ春 まだ白雪の積れども 
 若菜の萌えて色青き こゝちこそすれ砂の上(へ)に
 春きにけらし春よ春 うれしや風に送られて
 きたるらしとや思へばか 梅が香ぞする海の辺(べ)に
(島崎藤村『若菜集』「草枕」より)
○○
さて、この○○にはどういう言葉がはいるでしょうか。
始まりが「拝啓」だから、結末の言葉は何?


 平成二十六年二月十四日
襲明道人
若菜のような紗良 殿

 幼い頃から、日本の詩歌に親しむということが、どれほどその子の心を育てることか。
 日本語アップダウン構造の力を力説する私でありますが、同時に日本の詩歌文章の美しいリズムの中に深い神韻を感じ取るということの大切さも痛感しているのです。

 「枕草子の言霊解釈」を書いているのは、そういうわけです。今更「枕草子」の勉強は・・・などとおっしゃらずに、一度私の「言霊解釈」読んでみてください。日本人・清少納言の素晴らしさと日本語および日本人の感性の素晴らしさにあらためて感動することでしょう。
 →枕草紙の言霊解釈・はじめに
 →枕草子の言霊解釈1-1 春はあけぼの

 おっと、言い忘れた。感性力については「産土と人間力(3) 人間力の要素(感性力)」もお読みくださいますように。