日本酒「あさ開き(あさびらき)」は寒気の中で味わう酒

日本酒は日本文化の華:「あさ開き」(あさ開き)の蔵元・産地

日本酒あさ開(あさびらき)十一代目源三屋は新酒鑑評会で12年連続金賞受賞
酒銘: あさ開(びらき)
蔵元: あさ開(あさびらき)十一代目源三屋
土地: 岩手県盛岡市
創業: 明治4年

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岩手の日本酒「あさ開き」(あさびらき)の酒銘を楽しむ

「あさ開(あさびらき)」とは、岩手県盛岡市の造り酒屋である。その蔵元「あさ開(あさびらき)」が、「あさ開(あさびらき)」という酒を造っている。その名酒「あさ開(あさびらき)」が、何と全国新酒鑑評会で12年連続して金賞受賞という記録をもつ。(2012年時点で金賞受賞17回。)

これは「あさ開(あさびらき)」の社名・酒銘を探って見なければなるまい。

万葉集に「あさ開」は「漕ぎ出る」にかかる枕詞として見られる。

【訓読】 朝開き 漕ぎ出て 我れは由良の崎 釣りする海人を 見て帰り来む
【原文】 朝開滂出而我者湯羅前釣為海人乎見反将来
【作者】 柿本人麻呂 

夜が明けて朝が開き、さあ舟を漕ぎ出でようとなる。「あさ開」を社名・酒銘に採った創業者の心がそこにある。
南部藩士だった村井源三が武士を辞め、明治4年(1871年)に盛岡で酒造りを始めたのが「あさ開」の創業である。明治維新の大変動で、侍から商人としての再出発を志し、新しい時代の幕開けにかけて「あさ開」の名をつけたのである。

【訓読】 世の中を何に譬(たと)へむ朝開き漕ぎ去(い)にし船の跡なきごとし
【原文】 
【作者】 沙弥満誓(さみのまんぜい)(万葉集3-351)

沙弥満誓の和歌は「跡なきごとし」で終わるのだが、いやいや、どうして、「あさ開」創業の志は、今に伝えられている。

「あさ開」創業の志と経営理念

「あさ開」の創業精神
『時を拓き、心を開く』
数々の試練のときを迎えても、常に時代を拓き、人々の心を開きながら常に未来を展望し、いかなる困難にも打ち勝つ。

『時を拓き、心を開く』、開拓精神は、今も変わらない。
「あさ開」の経営理念もまた、しっかりとして有難い。

株式会社「あさ開」経営理念
◎株式会社あさ開は、全社員の物心両面の幸せを追求いたします。
◎株式会社あさ開は、すべてのお客様の食の場における「喜び」「楽しみ」「くつろぎ」に貢献いたします。
◎株式会社あさ開は、岩手の食を通じて地域の未来に貢献いたします。

「全社員の物心両面の幸せを追求」する蔵元であるから、世の酒飲み達の心を満足させる酒造りができるのであろう。
だからこそ、全国新酒鑑評会で21回連続入賞を果たし、そのうち17回は金賞を受賞した(2012年時点)。この記録はこれからも塗り替えられて行くであろう。

「あさ開」社長の村井良隆氏のあいさつをも引用する。

□代表取締役社長 村井良隆 あいさつ
文化の香り高い国には、その国ならではのうるわしい酒があります。
岩手は、古くから南部杜氏の里として知られた酒どころ、米、水、技に恵まれたこの地で、豊かな自然に磨かれ、愛すべき人々にはぐくまれて百三十有余年、日本酒「あさ開」は、いまも酒の里・岩手を代表するブランドとして、地元で、東京で、海外で…と高い評価をいただいています。

社名である「あさ開」は、万葉集の中の歌詞にちなんだもので、「船出」の歓びをたたえ、祝福した歌の枕詞。時代とともに、求められる酒の味も変わっています。「あさ開」の歴史は、伝統を大切にしながらも、時代を先取りする技術と感性を磨き続けてきた歴史ともいえます。

そこには常に「船出」がありました。時代に心を開き、時代を切り拓いてきた熱き志しがありました。その凝縮された思いを一滴一滴に込めながら「あさ開」は、これからも美味しい日本酒を造り続けてまいります。

私は平成19年(2007年)9月に、「昌原(あけはら)」と改姓して以来、これまでの文章を一切改めて、先日トランスペースのサイトを一新した。昌を「あけ」と読むことに、夜がアケて太陽が高々と登る新時代の意識を重ねている。

そういう私にとって、「あさ開(びらき)」とは、まことに心楽しくなる名乗りである。

この「日本酒こそ日本文化」では、無数にある日本酒の酒銘を酒の肴にして、言葉遊びをするつもりでいるのだが、ここで紹介する酒をすべて私が味わった上で紹介するのではない。

学生時代なら、いざ知らず、今や還暦過ぎ、酒量はめっきりと減った。
そこで、原則として、味には言及せずに、ただ名前のおもしろさだけに焦点を当てて、文章を書き綴るつもりである。

とはいうものの、この「あさ開(びらき)」だけは、冬に入って思いっきり寒くなったら是非とも注文して味わってみようと思う。

東北盛岡の冬は厳しい。
ああ、北風よ、吹かば吹け!

厳しい寒気の中でこそ、朝開く陽光がひときわ有難い。
厳しい寒気の中でこそ、日本酒の旨みが醸成されていく。

身が凍えるような寒気の中で、あさ開きの陽光が燦然と輝く。
それを思いながら、名酒「あさ開」を味わってみたいと思う。

名前の力というものは、まことに妙なるものである