(5) ナンバ歩きの日常稽古法

この記事をお読みになる前に → 【4】「ナンバ歩きの勧め」

1.ナンバ歩きの日常稽古三法

 日本人の伝統的な歩き方であるナンバ歩きを、身に付ける稽古方法を三つほど紹介いたしましょう。
 この三法は、私が日常の生活の中でナンバ歩きを稽古するために考え出した方法です。道場稽古ではなく、日常の稽古でございます。 
 そのナンバ歩き稽古三法とは、次のごとし。

 1. 竹馬ランドセル法
 2.浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)法
 3.妊婦戸板法

 この三つをしっかりイメージして覚えてください。
 まず、竹馬をイメージします。
 次に、忠臣蔵でご存じの浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が烏帽子装束でその竹馬に乗った所をイメージします。
 最後に、竹馬に乗った浅野内匠頭が、装束の裾に動きを封ぜられて転倒して戸板にぶつかるとイメージしてください。
 これで、竹馬、浅野内匠頭、戸板、が強烈に脳内に定着しましたね。

 これがイメージ連想記憶法という物です。
 では、ナンバ歩きの日常稽古法の説明に入りましょう。

1-1. 竹馬ランドセル法(ナンバ歩き第一法)

 昔、日本の子供たちは、よく竹馬に乗って遊びました。私も小学生の頃に竹馬を手作りして楽しんだ思い出があります。竹馬に乗って歩く動きが、そのまま、ナンバ歩きになっています。

 竹馬ランドセル法の実際のやり方は次のとおりです。
 竹馬があれば勿論、竹馬に乗って戴くのが一番よろしい。
 竹馬がなければ、ランドセルを背負ってください。
 大人の方は、リュックサックを背負って下さい。
 リュックサック(ランドセル)の肩ひもに、両手をかけます。
 ちょうど両手で竹馬を握っているようになります。

 その構えで、竹馬にのっているとイメージしながら、右手右足を同時に出し、左手左足を同時に出して歩きます。これが竹馬ランドセル法(ナンバ歩き第一法)でございます。リュックサックの肩ひもに両手をかけることによって、手の動きが制限されますので、ナンバの動きをせざるの得なくなるのです。

 ランドセルを背負っている子供たちに、この竹馬ランドセル法(ナンバ歩き第一法)を教えてやって下さい。
 子供たちがメキメキ賢くなるかもしれませんよ。

 竹馬もリュックサックも持っていない人は、次の浅野内匠頭法(ナンバ歩き第二法)をお試し下さい。

1-2. 浅野内匠頭法(ナンバ歩き第二法)

 竹馬に、浅野内匠頭法が乗って転んで、戸板にぶつかる。
 もう覚えましたね。

 ああいう装束を着ていては、足がもつれて裾を踏んづけてしまいます。
 裾を踏んづけないために、浅野内匠頭法は両手を腰の切れ目から中に入れて、裾を持ち上げるようにします。
 ちょうど、ポケットに手を入れてズボンの裾を持ち上げる心地です。
 この調子で、ポケットに手をいれて、左足を出す際には左ポケットを持ち上げる心地になり、右足を出す際には右ポケットを持ち上げる心地になる。
 つまり、装束をつけているつもりで、浅野内匠頭が殿中(でんちゅう)をしずしずと歩いているつもりで歩を進めるのです。

 これが、浅野内匠頭法(ナンバ歩き第二法)でございます。
 寒い時の散歩には、ポケットに手を入れて、浅野内匠頭となってナンバ歩きなさるとよろしいでしょう。

 えっ、なんですか?
 暑いときには、ポケットに手を入れたくないですって?(うるさい読者だなあ・・・。おっと、独り言。)
 そういう暑苦しいお方、じゃなかった、すゞやかな動きをなさりたいお方は、次のナンバ歩き第三法・妊婦戸板法がおすすめです。

1-3. 妊婦戸板法(ナンバ歩き第三法)

 妊婦戸板法(ナンバ歩き第三法)は、陣痛が始まった妊婦を戸板に乗せて運ぶ方法・・・ではございません。
 まず、自分の身体が一枚の戸板であると観想(イメージ)します。
 戸板ですから、ひねることはできませんね。
 前に進もうとすると、ロボットのように、身体の右側(右肩と右足)を出し、次に左側(左肩と左足)を出さざるを得ません。これがナンバの動きでしたね。その動きに両手を添えます。

 左右の掌(てのひら)を組み合わせて、臍(へそ)の下、丹田(たんでん)と言われる部位におきます。
 ちょうど、妊婦がお腹(なか)の中の赤ちゃんを両手でやさしく包み込む心地ですね。
 こうして、丹田に両手を重ねたまま、大事な赤ちゃんを丹田に慈しむ心地で、戸板をゆさゆさと前後させてナンバ歩きするのです。

 しばらく妊婦戸板法でナンバ歩きすると、丹田のあたりがポカポカと暖まり、健康増進に大いに寄与することになります。
 実は、この妊婦戸板法(ナンバ歩き第三法)が、私イチオシのナンバ歩き稽古法でございます。

1-4. ナンバ歩き稽古法の最終目標:ただの戸板法

 しばらく、妊婦戸板法でナンバ歩きした後、両手を丹田から外してだらりと垂らして見てください。
 両手をだらりと垂らしたままで、腰がナンバ歩きする感覚、これが昔の日本人の伝統的歩き方ですね。
 両手で丹田を抱くという妊婦の姿勢をやめて、ただ、自分の身体が戸板になったように思いなして、足と腰を同時に出して歩く。

 この戸板法が、ナンバ歩きの稽古法の最終目標と言えるでしょう。
 この戸板法を、せいぜい日常の動作に取り入れてください。

 そのうちに、日常の起居動作全般が、ナンバの動きになってくることでしょう。
 そうして初めて、あなたは本当の日本人の所作をあらわすことができたということができるでしょう。
 日本の心を取り戻すという志、それと共に、あなたの肉体にも日本的ナンバ動作をしみ通らせてあげて戴きたいと思います。

2.再びナンバ歩きの効能

 前の記事【4】「ナンバ歩きの勧め」において、ナンバ歩きの効能に付いて述べました。
  ナンバ歩きは肉体を整える
  ナンバ歩きは精神を整える
  ナンバ歩きは能力(脳力)開発に資する

 ナンバ歩きは、肉体を整え、精神を整え、能力(脳力)を向上させるということが、これから色々な分野で実証されていくと思います。
 高校バスケットのコーチングにナンバの動きを取り入れて大きな成果を出したとか、一流の陸上選手がナンバ走りの動きを意識するようになって成績が上がったとか、いくつもの例が出てきておりますね。

 あなたにお願いしたいのは、あなたご自身がナンバ歩きを稽古なさるだけではなく、”あなたのお子さんたちにもナンバ歩きを教えて”あげて欲しいのです。
 幸い小学生たちは、ランドセルを背負っていますでしょう。竹馬ランドセル法(ナンバ歩き第一法)を行うのに、打ってつけなのです。通学の途上、竹馬ランドセル法でナンバ歩きする子供たちが増えると、この日本も少しはよくなるのではありませんか。

 あなたの身体がナンバ歩きを楽しむようになったなら、あなたの身体が日本の心を求めてゆくことでしょう。
 ナンバ歩き、万歳!