恋に落ちる(fall in love):英語も日本語も「落ちる」のが好き

「恋に落ちる」という。英語では、fall in love という。
英語も日本語も、「落ちる」(fall) ことに変わりはない。

英語や日本語とは違って、恋に「上がる」、「昇る」という表現をする言語があるだろうか。昇るのは「鯉のぼり」ぐらいではなかろうか。
「恋は神代の昔から」と言いながら「恋に落ちる」とは、英語や日本語では、恋愛に後ろめたさを感じているのであろうか。

ところが、この「落ちる」という感覚がすこぶる人間には楽しい。
幼児を両手で高く掲げて、一瞬両手を放し、下で抱きとめる。この「落ちる」感覚が、子どもは大好きであり、繰り返し繰り返し、落ちることをせがまれる。

この「落ちる」時の感覚が、無重力状態の感覚である。
エレベーターが急発進して下に落ちる時、ふっと体重が消えるような感覚になり、ふらっとめまいに似た感じがする。これが無重力感覚である。
仮に高いビルから飛び降りたとすると、落ちている間は、自分の体重を感じない無重力状態になる。
宇宙ステーションに数ヶ月滞在している宇宙飛行士たちは、数ヶ月間ずっと落ち続けていると表現できる。

「落ちる」(fall) 時には、重力の制約から解き放されるのだと考えると、「恋に落ちる(fall in love)」という表現も成る程と納得できるではないか。

「眠りに落ちる」(fall asleep)という表現もある。
明日は試験という夜に、詰め込み勉強をしていて睡魔に襲われ、ああ、いけない、もうダメだ・・・と眠りに落ちる。
私も若い頃は翻訳の締め切りに迫られながら、ええい、どうにでもなれとばかりに眠りに落ちる・・・コレは一種の快感でもあった。

ジェットコースターが喜ばれるのも、落ちるときの無重力感を冷や冷やしながらも喜ぶからであろう。
恋に落ちる(fall in love)も、眠りに落ちる(fall asleep)も、落ちる時の快感を表した表現と受け止められる。

若者よ、せいぜい、恋に落ちたまえ!

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