アップダウン構造の見つけ方 (三角関係を探せ)
「アップダウン構造」という魔法のようなキーワードを使って、日本を丸ごと解明してゆくものです。
1. アップダウン構造の見つけ方(三角関係を探せ)
1-1. 三角関係を探せ
ありがとう、すみません、おかげさまで、はアップダウン構造の言葉でした。
ごめんなさい、はアップダウン構造ではありませんでした。
今回は、アップダウン構造の言葉の探し方を学びましょう。
アップダウン構造の言葉を見つけるには、三角関係を探すことです。
この三角関係は、ちょっと見ただけでは分かりません。
しかし、慣れると、隠れている三角関係を見つける感が働くようになります。
言葉の探偵さんになったつもりで、隠れた三角関係をあぶり出していきましょう。
では、三角関係とは何か。
例によって、英語の助けを借ります。
英語(house sitter)と日本語(留守番)の中身を調べてみることにしましょう。
1-2. 英語(house sitter)の二者関係
「留守番」という日本語を英語に直すとどうなりますか。
辞書によると、
留守番をする house-sit
留守番をする人 house sitter
ベビーシッターではなく、ハウスシッターと言うわけですね。
探偵さんがこれで通り過ぎてしまっては、浮気は・・・じゃなかった、三角関係は見つけだせません。
house sitter は ショートカットそのものです。そこには二者関係しかありません。
○英語の二者関係
house 家
sitter 番をする人
House sitter の中には、家と番をする人の二者しかいません。
第三者は含まれていないのです。
だから、英語は単純明快なのです。
1-3. 日本語(留守番)の三角関係
日本語「留守番」はどうですか。
留守をするのは、誰ですか、家ではありません。番をする人でもありません。
留守をするのは、家の主人です。
これは隠れた第三者なのです。
つまり、日本語「留守番」の中には、
・家を留守にする主人
・家
・番をする人
の三角関係が含まれているのです。
留守番の三者関係
(主 人)
↓ ↑
主人が家を ↓ ↑ 主人に代わって
留守にする ↓ ↑ 番をする
↓ ↑
↓ ↑
↓ ↑
(家) ← ← ← ← ← ← (番をする人)
留守番する
家 (house) の
番をする (sit)
と言えば、単純に済むのですが、日本人はそれでは済まさないのです。
何故、番をすることになったのかという理由である主人の「留守」を、言葉ひとつの中に詰め込もうとするのです。
拙著『日本語は神である」』をお読みの皆さんは、冒頭に「避雷針」の話があったのを覚えてらっしゃいますか。
英語の Lighting conductor (避雷針) は、
Lighting) → → → → → conductor
雷 (雷が針を通る) 針
の2者関係に過ぎません。ショートカット構造はシンプルです。
日本語はシンプルでは済まさないのです。
人間が針を使う。
針が、雷を通す。
人間が雷を避ける。
ここにも、三角関係が見て取れます。
(人間と針と雷の三角関係)
(人 間)
↓ ↑
人間が雷を ↓ ↑ 人間が
避ける ↓ ↑ 針を使う
↓ ↑
↓ ↑
↓ ↑
( 雷 )← ← ← ← ←( 針 )
針が雷を通す
1-3. もっと極端な六者関係の日本語
もっと極端な例を一つ。
「留守番電話応答代行サービス」を英語に訳すとどうなりますか。
答えは、 Answering service これだけです。
英語は、常に単純明快な二者関係です。
Answerging
service
これだけです。
ところが、日本語の「留守番電話応答代行サービス」の中には、要素がいくつ含まれていますか。
留守をする
番をする
電話する
応答する
代行する
サービスする
実に、六個もの要素が含まれているのです。
日本語の複雑な6者関係も、英語に直すと単純な2者関係になってしまいます。
ーーーーー
| 留守 |
| 番 |
| 電話 | + サービス
| 応答 |
| 代行 |
ーーーーー
|| ||
Answering + service
1-4. 日本技術の強さの秘密
日本語は、ショートカット構造の単純な2者関係では飽き足りないのです。
3者関係どころか、時には4者5者6者関係までも、言葉ひとつにぎっしりと詰め込もうとするのです。
日本語は、現実が複雑怪奇であるということをよく承知しているのです。
単純じゃあないのです、現実は。
しかし、それをあえて単純化して、ショートカット構造で切り取るのが、西洋語です。
単純化するところから、近代科学が生まれ育ちました。
近代科学というものは、複雑極まりない現実を、ショートカット的に切り取って、限定して、構築された知の体系に過ぎません。
一方、日本は、科学以上に技術が得意です。
科学技術と並び称されるので、両者をごっちゃにしている人が多いのですが、科学(サイエンス)と技術(テクノロジー)は、全く別物です。
科学(サイエンス)・・・・ショートカット的、純粋理論の世界
技術(テクノロジー)・・・複雑な現実が相手
複雑な現実を相手にする技術(テクノロジー)の分野で、複雑な三角関係言語を操る日本人が力を発揮するのは当然ですね。
日本技術の強さの根本要因は、日本語のアップダウン構造にあります。
日本語の三角関係は、なかなか味なものですね。
さあ、皆さん方も、日本語の中の三角関係を探してください。
見つけたら、ぜひとも私に教えて下さいね。
2.編集余録 (若者こそアップダウン構造を学ぼう)
晶子ちゃんからメールをもらいました。
私は8人の子ども達のゴッドファーザーでありますが、晶子ちゃん(もう20才)は、その中の一人です。
日本人には日本が足りない、というコマーシャルが流れていますが、まさにそのとおりです。
日本のいいところ、文化も言語もすべてにおいてきれいさをなくしつつありますね。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
私の頭も鍛えてください(笑)
父にもしっかり読んでもらいました。感動していたようです!
彼女はお父さんと一緒にこのメルマガを読んでくれているようです。
彼女のように、これから結婚しようという若者達が、アップダウン構造を学んでくれるというのは、とてもうれしいことです。
やがて、アップダウン構造は、日本人全体の常識となります。
これは、間違いございません。
どうか、皆さん、若い人たちに「日本語アップダウン構造」を紹介して戴けませんか。