一(ひとつ)創造の火を点す
一番始めは一宮(いちのみや)・・・。昔の歌にありました。
そこで、「日本語おもしろ話」の一番始めの記事も、「一」から始めましょう。
1.「一」は数字の1
「一」(ひとつ)の用例は、
– たったひとつの恋
KAT-TUN の亀梨和也君と、綾瀬はるかちゃん、の恋物語。
– いわゆる、ひとつの・・・
長島茂雄監督の口癖。
大体にこの日本語「一」という言葉は、"数字の1の意味"で使われることが多いですね。
えっ、「多いですね」ってことは、数字の1以外の意味で使われることがあるんですかって?
ええ、あります。
日本語の一二三・・・は、英語の One, Two, Three などとは全く異なる言葉の力を持っているのです。つまり、言霊が一二三・・・には籠められている。
2.数字の1以外の意味
たとえば、神様をお祭りする際に日本語で祝詞(のりと)を唱えますが、祝詞の中に、天の数歌(あめのかずうた)というものがあります。
ヒト、フタ、ミー、ヨー、・・・
と数を数えていくのですが、これは単に数を数えているのではありません。
ワン、ツー、スリー、では祝詞になりはしませんね。
ヒ → 火
ト → 点(とも)る
つまり、ヒートー と唱えることで、"創造の火を点(とも)して"いるのです。
これを、英語の one、two、three と唱えても、祝詞の効果は出てきませんね。
日本語って、素晴らしいでしょう!
3.一もヒトなら、人もヒト
「一」をヒトと読みますが、「人」もヒトと読みますね。
これ実は関係があるのです、日本語の世界では・・・。
「一」は、ヒートーで創造の火を点(とも)すと言いましたね。
その創造の火(ひ)を霊(ひ)とも言います。
霊(ひ)が止(と)どまる存在を、ヒト(人)というのです。
火(ひ)を点(とも)す存在を、ヒト(ヒト)というのです。
人間は「万物の霊長」というでしょう。
肉体だけが人間ではないのです。
霊なるもの、つまり霊魂(ヒ)がとどまっている存在が、ヒト(人)なのです。
えっ? ヒトという読み方は同じでも、「一」という漢字と「人」という漢字が違うから、「一」と「人」はやっぱり関係ないんじゃないかですって?
あのね、漢字は漢字、それは中国からやってきたものでしてね、本来の大和(やまと)言葉は、音に意味があるのです。
それに、ここは「日本語のおもしろ話」でしょ。
漢字を無視はしませんが、それ以上に日本語の音に意味があるということを、しっかりと腹に収めてください。
4.一(ヒト)つであるから、等(ヒト)しい
「一」には、数字の1の意味もありましたね。
この意味から、生まれたのが、日本語の「等(ひと)しい」という言葉です。
一(ひと)つであるから、同じもの、等(ひと)しいものとなるワケ。
ところで、先程、KAT-TUN の亀梨和也君のことを書きましたね。おなじKAT-TUN のメンバーに赤西仁(あかにしじん)君がいます、
赤西仁君の「仁」は「ひとし」と読むこともあるのです。
– 仁はジン → 人(じん)に通じる。
– 仁はヒトシ → 等(ヒト)しい → 一(ヒト)に通ずる。
おもしろいでしょ、日本語は。でも、もひとつ面白いのは、
– 仁は人プラス二(人と二の合字。)
つまり、この仁はねえ、自分とは別人(二つのもの)をも、自分とヒトシイと同一視して慈(いつく)しむという言葉なんです。
「仁」というものは、儒教の最高の徳目(とくもく)として尊重されているのです。
儒教で尊ぶ人間の徳目とは、
– 仁(じん)義(ぎ)礼(れい)智(ち)信(しん)
仁義礼智信(じんぎれいちしん)と唱えて覚えてしまいましょう。
この仁義礼智信の五つの徳目の中で、「仁」がもっとも尊重されているのです。
「仁愛」の心がもっとも尊い。
どうですか、日本語の話は、深いでしょ。
KAT-TUN の赤西仁君や亀梨和也君のことで、こんなに深い話になるとは、オドロキ!
「仁美」(ひとみ)という女の子のお名前もありますね。
赤西仁君のように「仁」を名前にもらっている男の子たち女の子たち、この「仁愛」の心の深い人となって下さいね。
言葉というものは、日本語というものは、これほど深い意味がある。
そして、名前もまた、深あーい意味があるのです。
人の名前というものは、単なる記号ではないのです。
"「名は体(たい)を表す」"とは、真実の言葉です。名前というものは、自分をあらわしているのです。
どういう名前を持っている人でも、その名前には意味があります。
"自分の名前の意味を考えて生きてゆく"ということが、人生に深み
と広がりをつけていくことでしょう。
自分の名前を大切にしてくださいね。
5.ヒトも人なら、one も人
一(ひとつ)が人に通ずると書きました。
実は、英語の one も人を意味するのです。
ご存じですね、one は数詞でもあり、代名詞でもある。
one が代名詞となると、人を表すことがある。
【用例】 No one knows. 誰も知らない。
日本語の数を表す一(ひとつ)が、人(ヒト)を表す。
語の数詞 one(ひとつ)も、人を表す。
面白い巡り合わせですね。
さて、これまでの話を整理しますと、不思議の輪が広がります。
– 一(ヒト)・・・火を点(とも)す。
– 一(ヒト)・・・人(ひと)に通ずる。
– 一(ヒト)・・・等(ひと)しい
– 一(ヒト)・・・仁(ひとし)の意味(同一視)。
おまけに、英語も不思議の輪に加わって、
– 一(ヒト)・・・ one ・・・ 人
英語だって、実に不思議な言語です。
大体、人間の使う言語というものは、どの民族の言語にしろ、まか不思議な代物(しろもの)なのです。
言葉の不思議にびっくりして戴けましたでしょうか。
次の記事をお楽しみに。
【参考】仁についてもう少し詳しく、ナゼふたつがひとつに? → 【2】仁は二つなのに一つ
【参考】一二三(ひふみ)の根本義 → 【3】ひふみ(一二三)の神秘