【神道04】産土神と氏神の違い

 産土神の知識は、日本神道の根幹をなすものであります。
 産土神は、しばしば氏神と混同されます。産土神と氏神をきっちりと立て分けて心におさめておきましょう。

1. 産土神と氏神は異なる神

 産土神(うぶすながみ)と氏神(うじがみ)は、世間一般では同じ意味で使われる場合が多いのですが、本来は異なる神として立て分けるべきです。

 産土神(うぶすながみ)とは、土(すな)を産み出す神、大地を始め万物を産み出す神です。
 産土神は、日本神道の神とのみ限定してはいけません。

 日本に限らず、地球上、大地ある限り、その土地に産土神(うぶすながみ)がいらっしゃる。神道であるとか、キリスト教であるとかに関わりなく、地球全土に産土神がいらっしゃるのです。

 この産土神が、その土地をお守りなさいます。
 つまり、その土地に生育する作物、植物、河川、その他の自然物をはじめ、その土地に住む人間の生活全般に密接に関わる働きをしておられるのが産土神です。

 氏神(うじがみ)とは、氏一族があって、その一族を守護する神のことです。
 先祖のみたま祭りをする際には、先祖のみたまたちと、その奥にいらっしゃる氏神様とを、お呼びしてみたま祭りをお仕えします。

 また、先祖のみたまが、あの世で修行を積み重ねて神格化なさると、その家の氏神の一柱となることもあります。

2. 氏神と産土神の混同のいきさつ

 ある一族がある土地に移り住んで、自分たちの一族の守護神を祭る神社を建てたとすると、その神社は、その一族にとっては氏神の神社です。そして一族そろって氏神様のお祭りを続けていきます。

 年月が経つにつれて、その氏神神社が、産土神社の働きを兼ねるようになります。
 つまり、特定の一族の守護神という立場からさらに進んで、その土地およびその土地に住む人々全体を守護するという産土神の立場に深化するのです。

 氏神神社が産土神社に変化するのです。

 産土神界も時代とともに動きます。
 同時に、他のいろいろな氏の出身者たちが、その土地に定住していきます。

 日本人は本来、神仏崇敬の心が厚い民族ですので、新参の人々も共に、その神社に参拝するようになります。
 そこで神社創建の頃に使っていた「氏神様」という言い方がそのまま受け継がれて、他の氏の人々も「氏神様」と呼んで参拝するようになりました。

 これが、産土神と氏神が混同されてきた経緯です。

 氏神さまは、産土の神さまとは異なる神さまです。
 ところが最近は、産土の神さまを氏神さまとお呼びすることがあります。
 日本全国の神社を統括する神社本庁自体が、産土の神を氏神と呼び、産土の恵みを受けている人々を氏子と呼んでいます。
 産土という意味での氏神も氏子も、長く日本人が使い続けた言葉遣いですので、それはそれでよろしいでしょう。
 しかし、とりわけ、自分の氏の「精」のつながりに意識をおいて氏神の祀りを行うというような場合には、産土の神とは異なる我が家の氏神というとらえ方が必要となります。
 本来は、 氏神さまは、それぞれの家の「姓」の流れ「精」の流れを守護する神様です。つまり、あなたの家には、あなたの氏の氏神さまがいらっしゃり、隣の家には隣の氏の氏神さまがいらっしゃるのです。
親子で学ぶ神道読本(一)父と母と産土の神 P.42)

 このように、産土の神を氏神と呼ぶ習わしが広く行われているのですが、神々の世界のことをより詳しく精確に学んでいこうと心掛けるならば、産土神と氏神ははっきりと立て分けるのがよろしいでしょう。産土神社に参拝し、氏神をお呼びして先祖の祭りをお仕えするのです。

  産土神 → 土地およびその土地に住む人々の守護神
  氏神  → 氏一族の守護神

3. 産土神社の産子(うぶこ)

 また、産土神社の「氏子」(うじこ)という言い方も、本来の意味を考えれば、「産子」(うぶこ)と呼ぶのが正しいと言えます。
(まあこれも、あまりに厳しくこだわらずに、氏子でもよろしいのですがね。)

 さらに付言すれば、ある土地に定住して、30年間、その土地の産土神社に真心を捧げて奉仕すると、産土神はその人に対して氏神という立場をお取りくださることがあります。

 つまり、土地の守護神でありながら、崇敬厚いその人の一族に対しては、氏神としての守りの働きを表して下さるのです。

 産土神社を美しく爽やかに整えるのは、産子(氏子)の役目です。神主一人の役目ではありません。その土地に住む人が、自分たちで産土神域の清浄を保つように心掛けるべきでしょう。ただ参拝するだけではなく、神域を清浄に保つように努力するのです。それが参拝以上に大事な心がけでありましょう。

 産土神が本当に、わが一族の氏神としてお働き下さるまでに、産土神社にご奉仕したいものです。

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