日本人は畳生活で足腰を鍛える

畳生活が消え去りそう

日本人と畳は切っても切れません。
ところが、切っても切れないはずの畳が、日本人の生活から遠のきつつあります。

日本人の生活スタイルの洋風化から家の造りの洋風化が進み、ほとんどの部屋が椅子・机・ソファーの部屋で、畳の部屋はあっても、ごく限られた時間しか畳の上に座らないという家が増えているようです。
畳の上に炬燵(こたつ)をおいて、炬燵にはいってみかんを食べるということは、都会の若い人たちの家ではなくなりつつあります。
「田舎のおじいちゃんの家にはこたつがある」というのが、年末に両親と里帰りする小さな子供たちの楽しみの一つとなっています。
まさか畳生活が日本人の暮らしから消えてしまうとは思えませんが、畳の上での起居が断然少なくなりつつあるという現実は確かにあるようです。

リビングルーム(居間)やダイニングルームにテーブル・椅子を置くのは結構ですが、その横に畳のスペースを是非とも設けたいものです。そして畳に座る機会を増やすのです。それが日本人の足腰を鍛える基礎となるからです。

和室の畳の上で座ったり立ったり、起居を繰り返すと、洋室でのテーブルと椅子以上に足腰を使います。
だから畳は避けて椅子に座りたい、という心がいけません、
逆に、だから畳生活をしなけりゃならんのです。

畳と椅子テーブルで足腰の負担がこれだけ違う

畳生活お椅子テーブルの生活とで、足腰の負担(というより鍛え方)がどれだけ違うか、確認してみましょう。

来客を客室に通して、お茶を差し上げるとします。
洋間の場合は、椅子テーブルに座ったお客に、お茶コーヒーを差し上げるだけで、座ったり立ったりする必要はありません。
これが和室の場合はどうなるか。どれだけ立ったり座ったりするのか数えてみましょう、

1.お盆にお茶を載せて、客間の障子の前で座り、お盆を置いて、両手で障子を開けます。
2.お盆を持って立ち上がり、部屋へ入ります。
3.座ってお盆を置き、両手で障子を閉めます。
4.お盆を持って立ち上がり、お客様の前へ進みます。
5.座ってお盆を置き、お客様に挨拶し、お茶を座卓に載せます。
6.絵訳してお盆を持って立ち上がります。
7.障子の前で座り、お盆を置いて、両手で障子を開けます。
8.お盆を持って立ち上がり、室外へ出ます。
9.座ってお盆を置き、両手で障子を閉めます。
10.お盆を持って立ち上がり、退出します。

畳生活で客を迎えると、立ったり座ったりを10回も繰り返すのです。
だから、畳生活で足腰が鍛えられるのです。昔の日本人は、現代の日本人以上に足腰がしっかりしていたのではないでしょうか。

年をとると、目の次に脚に来る

年をとると、まず視力が衰え、次に脚力が衰えるようです。
武道修練の大事を説く言葉に「一眼二足三胆四力」(いちがん・にそく・さんたん・しりき)という言葉があり、一番大事な「眼(がん)」の次に「足(そく)」があるのですが、この順序は、逆に老化の順序でもあります。

老化を少しでも遅らせたいと思うのであれば、日常から足腰を鍛えるのが良いのですが、ことさらの鍛錬をしなくとも、畳生活をするだけで、上述のように結構な足腰の鍛錬ができるんです。

これから家を造るという若い人たちも、和室を造って畳の上で立ったり座ったりを繰り返すという日本人の生活様式を是非とも保持して戴きたいと願っております。

【参考記事】真剣勝負には、一眼二足三胆四力

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