西洋人は「塩で浄める」が分からない

「塩で浄める」ということは、日本人にとっては常識です。
葬式に出ると、会葬御礼をもらいますね。そこに小さな塩の包みが付いています。
自宅に戻ったら、その塩で自分を浄めて家に入ります。これは日本人でしたら何の不思議もなく行っています。ところが、この常識が、西洋人には通用しません。
西洋人は、「塩で浄める」が分からないのです。

「塩で浄める」を不思議に思う西洋人

スコットランドの友人に、土地の祀りをする際に地中に塩の柱を立てると言いましたら、
なぜ塩を使うのか、とても不思議がられました。
ミネラルが土に良い影響を与えるのか、などと質問されました。

塩にはケガレを祓う力がある

ミネラルがどうこうという話ではなくて、塩にケガレを祓う力があるという話をしますと、
益々驚かれました。どうして、塩という物質にそんな力があるのかと。

塩に浄めの力があるという日本人の常識は外国人には通らないのです。

昔の時代劇などでも、縁起の悪い人物を家から追い払った後で、
「塩をまけ!」などと言いますね。

最近、大相撲の土俵上で倒れた人を救急介抱するために土俵に上がった女性たちに対して、
「女性は土俵から下りてください」というアナウンスがなされて物議を醸しました。
このアナウンスは、女性をケガレと見る観点からなされたのですが、
その後で、ケガレを祓うためでしょうか、大量の塩が撒かれました。
これ見よがしで、失礼ですね。
今の大相撲が、そんなに清らかだとは思えないのですがね。

それはともかく、日本人にとって「塩で浄める」ということは、昔からの感覚として伝承されています。

水の浄めと火の浄め

日本神道では、六月末と十二月末に大祓えの神事が、全国の神社で行われます。
六月大祓えは、水の力で祓えを行い、十二月大祓えは、火の力で祓えを行います。
水の浄めと火の浄めがあるわけです。

日本人は、こだわりを水に流すのがとても上手な民族です。
近隣の他民族は、過去にこだわり、こだわり続けているのですが、
日本人は、さらりと水に流して忘れることが出来る民族です。
水の祓えの力を豊かに蓄えている民族なのです。

また日本人は、火の力も豊かに戴いています。ヒの本の国人であるのです。
火の力で不要な物を焚き上げることがあります。
古い手紙などは、そのままゴミ箱へ捨て去ることも致しかねます。
そういう際に、火焚き(ほたき)の神事を行います。
火で焚き上げることにより、この世に不必要な痕跡を留めないのです。
よろしくない波動を発散している手紙や写真などは、焚き上げるのがよろしい。

私は、手習いで御神名を半紙に書くことがあります。
御神名を書くと、御神名の響きがそこから鳴り出すのです。
そういうものを、ゴミ箱へ捨てる訳には参りません。
祝詞の下書きなどもまた、ゴミ箱へ捨てられません。
そういうものは、すべて、火焚きすることにしています。

塩は水の力と火の力の融合体

塩にケガレを浄める力があるのは、水の力と火の力を併せ持つからです。
塩= シホ = シ(水)+ ホ(火)
つまり、塩(シホ)とは、水と火が合わさった物、水が燃えたものと言うことができます。
太祝詞で、シホコホロと唱えるのは、水の力、火の力を振り起こすためです。
塩には水の力と火(日)の力が凝縮されているのです。
塩というものが、ものを浄める力があるということを、日常の生活で納得している日本人は、やはりマツリの民、祭祀民族ですね。

「塩で浄める」ということもまた、「日本人の特殊感覚」の一つであります。